◇ 耐震設計5つのチェックポイント

1.柱の直下率

柱の直下率とは、建物の柱の総本数のうち、1階と2階の柱が一致している割合のことを言います。構造上出来れば1階の柱と2階の柱が全て同じ位置にあることが望ましい訳ですが、設計上実際にはなかなか上手くいきません。そこで目安として何%位なら良いかの判定材料になります。共同住宅は大抵の場合100%になります。
なるだけ1・2階の間仕切を一致させるとか、開口部を一致させるなどの工夫をすることで、この数値をクリアする必要があります。
◆通常50%以上が目安です。

 

 

 

 

2.間仕切直下率

間仕切直下率とは、延べ間仕切り壁長さのうち、1階と2階の間仕切りが一致している割合のことを言います。柱と同様に、1階の柱と2階の間仕切りが、全て同じ位置にあることが望ましい訳ですが、設計上実際にはなかなか上手くいきません。そこで目安として何%位なら良いかの判定材料になります。柱と同様、共同住宅は大抵の場合100%になります。
◆通常60%以上が目安です。
1・2階の間仕切を60%以上も一致させるのは、なかなか難しいものです。実はこれをクリアしさえすれば、他の要素は意外と簡単にクリアできます。あまりデザイン志向に走らず、総二階建ての単純構造が良いと思います。かといって、デザインをとるか耐震を考慮した構造を優先させるかは、難しいところもあるかとは思いますが、素晴らしいデザインの家が地震で無残にも倒壊した姿を見ますと、う〜んと唸りたくなりますね。だったら両方を満足する家を造れば良い訳ですね。

 

 

 

3.耐力壁直下率

耐力壁直下率とは、筋違(または構造用合板)入りの壁の延べ長さのうち、1階と2階の筋違入り壁が一致している割合のことを言います。1階の柱と2階の筋違(または構造用合板)の入った壁が、全て同じ位置にあることが望ましい訳ですが、設計上実際にはなかなか上手くいきません。そこで目安として何%位なら良いかの判定材料になります。共同住宅は大抵の場合100%になります。
この耐力壁の直下率は、1・2階の間仕切が一致している割合が多ければ、数値はクリア出来そうだとイメージできるのではないでしょうか。耐力壁(筋違等が入った壁)が1・2階とも一致してれば、いかにも地震には強そうですね。
◆通常50%以上が目安です。

 

 

 

 

(注意)
上記の1〜3までに掲げた目安の数値(%)は、間取りによってはクリアーできない場合もあります。その場合でも、次の4・5の項目は絶対にクリアしなければなりません。

4.耐力壁量計算重要なチェックポイントです。

最初にお断りしておきます。ここの説明は一番重要なところなのですが、解り易く説明するのがとても難しいところでもあります。

法的な耐力壁量計算には、床面積による算定と見付面積による算定式があります。X方向Y方向ともに法的な必要壁量をクリアしなければなりません。耐力壁を何(筋違とか構造用合板)にするかによって計算上の倍率が定められています。

◆床面積と見付面積による計算をします。

 

【備考】
この壁量計算の概念は、例えば台風などの強風によって、建物が倒壊しない為の耐力壁(筋違や構造用合板が取り付けてある壁)の配置(取付位置)やそれぞれの部材の耐力倍率を、X方向とY方向それぞれに計算して、安全性をチェックする指標となるものです。

上の表の必要壁量の欄の床面積による数値と、見付面積による数値のどちらか大きいほうの数値よりも、1階、2階共に実際の合計数値のほうが上まわっていなければなりません。

施工業者の施工精度も考慮して、より安全性の高い数値になるようにしておいたほうが無難です。何故かと言いますと、筋違などに取付ける構造用金物が正しく取付けられて、はじめて求める耐力が確保されるという考えからです。

この建物の例では、X面のみの計算ですが、法律が求める床面積及び見付面積による必要量と、設計壁量の合計の量を比較して見ますと、共に設計壁量の合計の量の方が上回っていますのでOKということになります。

表中の掛ける数値に29とか15とか50とかありますね。これは建築基準法で定められている固定の数値です。
耐力壁には筋違のほかに、色々な構造用合板があり、壁倍率も違います。耐力壁をどれにするかは,建物の形状や材料の特性やコスト面から検討して決定されます。

5.耐力壁偏心率計算最も重要なチェックポイントです。

耐力壁偏心率は、建物の中心座標(重心)と、耐力壁(筋違や構造用合板が取り付けてある壁)の中心座標(剛心)から偏心量を求め、その偏心量を建物の間口及び奥行で除した数値のことをいいます。

筋違や構造用合板をバランス良く入れるための指標となるもので、耐震設計上最も重要とされています。
余談ですが、ほんとはこのデータを確認申請の段階で提出を義務付けるべきと痛切に思います。これほど耐震のことが叫ばれている割には、現在義務付けがなされていないのははなはだ疑問で首をかしげたくなります。
偏心率が、X方向、Y方向共に限りなく0に近いほうが良いとされています。
◆通常15%以内が目安です。
2000年(平成12年)の建築基準法改正において、木造住宅においては『偏心率は0.3以下であること』と規定されました。

2000年(平成12年)の建築基準法改正において『木造住宅の偏心率は0.30以下であること』と規定されています。(建築基準法施行令第82条の6では、各階の偏心率が0.15以下(ルート2)であることを規定しています)しかしながら、ここではさらに厳しく、限りなくゼロに近づけるようにシミュレーションして、より安全な建物を目指しています。

 

 

この建物の例では偏心率は、X方向が0.020、Y方向が0.030になっていて、重心と剛心がほぼ一致しています。
どのプランも、この数値がX方向Y方向共に、限りなく0に近いほうが良い訳ですので、構造設計をする段階で、筋違の位置を変化させながらシミュレーションして最良の位置を探し出します。

偏心率はXe、Yeともに0.15以下でなければなりません。この数値が大きくなればなるほど地震時の倒壊の危険性が増大します。従って、偏心率Xe、Yeの数値は限りなく0に近づけるようプランニングしなければなりません。
Xe、Yeの値を全く0にすることはほとんどの場合困難ですが、シミュレーションすることで0に近づけることは可能です。

この数値は耐震上最も重要なポイントとなります。
ここで、偏心率が何故0に近いほうが良いのかの説明をしておかなければなりません。以下に説明を加えておきます。

偏心率は何故0に近いほうが良いのか

上図を見ながらイメージしてください。
偏心 (へんしん)とは
建物(家)の重心が剛心から離れていることをいいます。図の重心というのは建物平面形状の中心位置です。剛心とは剛性の中心で水平力に対抗する力の中心、わかり易く言いますと、耐力壁(筋違等が入った壁)で囲まれた建物全体の中心位置のことをいいます。
偏心の度合いを偏心率といいます。重心と剛心が一致している場合には偏心率が0となり、重心が剛心から大きく外れた位置にあるほど偏心率は高くなります。

さて、地震力等の外力が加わった時、建物(家)はどのようになるのでしょうか。
建物(家)は上記の剛心を中心とし、重心が振り回されるように揺れて、ねじれを生じます。建物平面形状が同じで、壁の量が同じ建物(家)ですと、偏心が大きい程その揺れは大きくなり易くなると言えます。
建物(家)では、この偏心率が耐震上きわめて重要な要素となります。平成12年度の建築基準法改正の際に、建築物の各階の偏心率を0.15以下にすべきであると規定されました。

建物に強い外力が加わったとした時のことをイメージしてみましょう。
耐力壁で囲まれた剛心を駒の中心と考えます。建物の中心座標の重心が駒の中心より遠く離れているとします。地震の力は耐力壁で抵抗する訳ですが、その抵抗する耐力壁の中心座標(剛心)が、建物の中心(重心)よりも遠くにあると、分かりやすく説明しますと、いわゆる遠心力が働き、建物を回転させようとする働きが加わったと想定してください。建物の平面形状の中心(重心)が激しく振り回されてしますうことになります。イメージできますか?

地震の力の大きさに応じて、この遠心力が建物に強烈に加わり、耐力壁が持ちこたえることの出来る限界点を超えた時に破壊が起こります。
もうお分かりになったと思いますが、重心と剛心が離れれば離れるほど遠心力が大きく働きますので、倒壊の危険性が増します。逆に、剛心を限りなく重心に近づけることで、遠心力を抑え建物に加わる回転する力(振り回す力)を吸収(弱める)しようという訳です。

この説明は、正確には正しくない部分もありますが、イメージし易いと思って、このような説明にさせていただきました。

整理しますと、重心とは建物平面形状の中心、剛心とは水平力に対抗する力の中心と理解して下さい。偏心率とは重心と剛心の距離(へだたり)のねじり抵抗に対する割合として定義でき、その数値が大きい程偏心の度合が大きくなります。つまり耐力壁等の水平抵抗要素の平面的な偏りの大きいことを表してると言い換えることができます。

一般に間取りをつくる際、陽光を採り入れる為に、広いリビングやダイニングを南側に配置し、北側に便所や洗面所・浴室などを配置するというケースがとても多いのですが、必然的に、壁の密集した北側に剛心が偏り易くなる傾向になります。その結果、地震の際には、北側を軸とするように建物が振られ、壁の少ない南側が損傷し易くなるのです。

これを防止するための対策として、偏心率を限りなくゼロに近づける設計をしなければならないというのが、ここでの主張で、5つのチェック項目をすべてクリアすることが極めて重要な要素となってくるのです。

重心の位置や剛心の位置を割り出すだけの作業でしたら、そんなに難しい作業ではありませんが、限りなく0に近づけるシミュレーション作業は、手作業ではとても面倒で手間がかかり困難です。コンピュータの力を借りないと、とても大変な作業になります。時間をかけずに的確な数値確認をするには、コンピュータでシミュレーションしながら計算処理したほうが良いと思います。
上の全ての図と計算結果はコンピュータで計算し出力されたものです。